日本社会教育学会 60 周年記念国際シンポジウム
「持続可能な社会づくりと社会教育・成人教育
―3・11 後の日本社会からの発信」
9月28日、日本社会教育学会 60 周年記念国際シンポジウム「持続可能な社会づくりと社会教育・成人教育―3・11 後の日本社会からの発信」(主催:日本社会教育学会 後援:全国社会教育職員養成研究連絡協議会(社養協)他)が東京の学術総合センターで行われた。
「日本社会教育学会は、2013 年に創設 60 周年を迎えます。この国際シンポジウムは、日本が 2011年 3 月 11 日に未曾有の大震災にあい、原発事故による放射能汚染を経験したことを契機に、日本社会における社会教育研究の来し方を振り返りながら、これからの新たな、そして持続可能性を何よりも重視する社会づくりを目指す人々の取り組みの中に果すべき、社会教育の役割や課題を国際的な観点から論議することを目的に開催されます。
3.11 から触発される社会教育研究の課題、およびそれに応えて成果を出すことが、日本国内にとどまらず、国際的な成人教育の発展に寄与することとなります。」
テーマ1 「震災経験をこれからの社会づくりに生かす道筋を探る」の趣旨は下記の通り。
東日本大震災は、震災前から過疎化傾向にあった被災地の人口流失を大きく加速させている。公教育が育むのが「ふるさとを捨てる学力」となりがちな中で、地域再生の生命線は、地域をあきらめない存在である。そうした意志はいかに形成されてきているのか。また、このたびの震災は、脱原発運動など、持続可能で平和な社会づくりを求める人々の発言や行動を広げる契機となっている。それを一時的なものにせず、これからの社会づくりにつなげていく学習とは。本分科会では、計り知れない犠牲と引き替えに学び取られた経験知と、被災者主導の地域再生の取り組みの現状と課題を確認しつつ、脱原発政府を実現してきたドイツの経験にも学びながら、これからの社会を支え組み替える主体の形成の筋道を検討する。
報告1「東日本大震災と社会教育」として東北大学の石井山竜平氏が宮城の実例を交え報告を行った。
被災から教育が生まれた、つまり、現状を知り、よりよくするための当事者による共同的な学習を組織する動きがあるという。
しかし、復興において行政・制度的復興と当事者主導の地域再建の狭間で、住民の意見が聞かれることなくすすめられている。
その中で、被災から生まれた社会教育として被災者が被災者の現状を聞き、調査する「相互発達に向けた生きた学習」が始まっている。
それは、地域の破壊、人口流失に対して地域の存亡をかけて、世代継承から未来を考える動きから発した地域の社会教育になりつつある。
報告2「育まれてた村を捨てない力の今(飯館)」として福島大学の千葉悦子氏の報告があった。
被災から生まれた学びとして福島県域では大規模避難所のビックパレットでの社会教育職員による交流と自治ための広場作り、市民による共同の除染と学習の取り組み、飯館村の村をあきらめない人々の共同の取り組み、避難所・仮設での女性の仕事おこし、そして、若者の自主的な学びと対話などがある。
報告3「不確実なリスクに向き合う市民ー放射線防御と市民の学習 ESDの視点から」としてフェリス女学院大学の高雄綾子氏の報告が行われた。
チェルノブイリ事故のドイツ市民の対応は、怒り表現、不安の表明と共有、「怒り」を抱く人と「不安」を抱く人のネットワーク化であり、それにより市民の放射線防護イニシアティブが形成された。
市民の放射線防護イニシアティブにより、市民目線と専門知識の学びと発信であり、市民測定グルーブによる正確な測定、地方政治への反映が行なわれた。
これは、このようなESD的なリスク対処プロセスの学習によって、リスクの社会的コンセンサスを生み出し、それに基づく公平でオルタナティブなビジョンを醸成るめことで達成できた。
東京外語大学の谷和明氏のコメント・補足として「社会運動と自己組織的学習」としてコメントされた。
ドイツでは市民運動と学習運動としての社会運動が、Whyl市民大学のような自己組織的学習の発展によって、社会に専門性の獲得や社会認識の変化をもたらし、連帯力を醸成した。
その後、会場との活発な論議がされた。