こども環境学会2013年大会(東京)
「こどものコミュニティ力
―こどものつながる力・つなげる力―」
2日目
分科会B「放課後という時間の価値」
28日、分科会B「放課後という時間の価値」が神谷明宏氏(大会実行委員長・聖徳大学准教授)のコーディネートで、こどもの放課後に関係する発表者で行われた。
「子どもたちにとって「放課後」という時間は、無くてもいいような時間ではないはずです。子どもたちが自分たちの興味と関心で、様々な体験を広げ成長していく可能性のある時間です。「放課後」という時間の大切さを再考しましょう。」
まず、NPO法人子どもアミーゴ西東京理事の菊池宇光氏が西東京市で学童クラブや大型児童館を運営などについて語った。
菊池氏は仕事をしながら、父兄として自分のこどものために始めた学童クラブを地域のこどもたちのための活動に発展させてきた。
現在のこどもたちが「遊んでいない」ことを憂慮して、遊ぶことに力をいれるとともに、競争社会である学校とは別の「放課後」で学童クラブの争わない、そして、異年齢集団である環境を活かしている。
アーチストで「放課後の学校クラブ」プロジェクト主宰の北澤潤氏は多様な社会的アートの活動のひとつしての「放課後の学校クラブ」プロジェクトを行っている。
北澤氏は、社会的アーチストとして福島県相馬郡新地町仮設住宅での「マイタウンマーケット」、公共施設での「リビングルーム」プロジェクトなど個人の表現ではなく、住民の表現であり、社会参加でもあるアートを展開している。
「放課後の学校クラブ」プロジェクトでは、水戸の小学校に学童クラブではなく、放課後の学校をつくっている。つまり、「放課後」に学校ではない、もう一つの学校をこどもたちがつくってしまうのだ。
大田区子ども交流センター元所長の上平泰博氏は大田区子ども交流センターでこどもと高齢者、障がい者、外国籍市民との交流やまち遊びを行ってきた。
元々、校外教育の本の編集に携わっていた上平氏は、オランダのイエナプラン教育から異年齢集団の教育などを学び、ホモルーデンスとしての人間は学びより前に遊びがあるという。この立場から「放課後という時間の価値」としての遊びを論じた。
その後の全体論議では、こどもをまちから奪ったり、こどもを閉じこめてしまったことに対して、放課後の時間は、それを解放するものであるとのこと。
また、放課後の時間は、ある種の非日常的であり、ここで語られた活動は日常をかえる回路をつくるものであるなどが語られた。
分科会F「こどもがつながるための大人の役割
~つながる居場所で育ったこどもたちから~」
杉並区立南伊豆健康学園卒園生の伊藤駿太氏が南伊豆健康学園での体験から語った。
健康学園はぜんそくなどの療養を必要とするこどもたちのための区の施設で、療養しながら学ぶものである。
伊藤氏は、そこでは面倒を見てくれる大人がいると同時に、自分たちも仲間を面倒見ることが普通であり、療養を終えて学校に来た時に何にもそういう関係がないことに驚いたと言う。
NPO子どものまち代表の山本香菜子氏はミニさくらの体験から語った。
ミニさくらは佐倉市で佐倉こどもステーション(子ども劇場)が始めたこどもがまちを運営するプログラムである。
山本氏は小学生の時にミニさくらでまちづくりを行ったあとにサポーターとしてこどもたちの面倒をみて、その後、就職後に同団体の代表となったという。
ZEROキッズの鈴木歩佳氏は、その体験から語った。
ZEROキッズは中野を拠点とする団体で主にミュージカル公演のためのトレーニングを行うが、自然体験、環境学習なども行う団体である。
鈴木氏は小学生の時にZEROキッズに入り、レッスンや活動からいろいろなものを得て、また、人とのつながりを覚えたという。
その後、「大人の関わり方について」では各人からいろいろな指摘があった。
山本氏は、ミニさくらのこどもたちが生み出した「ミニさくら」の原則、つまり、大人は「見守る」、「忍耐する」、「指図しない」、「口出ししない」、「らくちん天国」が重要と語った。
伊藤氏は、大人は「いつも知ろうとしている人で、だから、 こどもに何か求めのはやめてほしい」、そして、教員ということで思ったのは「東京の先生は黒板に字を書いている人 」でなじめなかったという。
鈴木氏は、大人は「すぐに結果のでることを求めないで、一緒にやってくれる人」という。
コメンテーターの川崎市子ども夢パーク所長・NPO法人フリースペースたまりば理事長の西野博之氏は、こどもがつながりをつくった場所で育ったこどもの声を聴くことが大事と話す。
大人の「良かれ」はやめて、共に育ちあう、 それがこどもがつながるための大人の役割ではないかと語った。
その後、総括セッション、閉会式が行われた。