防潮堤海側にも施設 漁港や事務所、加工場
県は19日、防潮堤より海側に水産加工場や船の補給施設などの漁港や港湾の関連施設を建てることを認める指針案を示した。従来の基本方針では全ての施設を防潮堤より陸側に置くとしてきたが、防潮堤で海と街が分断されることを心配する市民の声を受け、海と密接に関わる施設に限り、水際に集約できるようにした。「人命最優先」の大原則は変えず、宿泊施設や住宅の建設は従来通り認めない。
指針案によると、防潮堤より海側には、漁具管理庫や事務所、養殖用の種苗生産施設のほか、漁港関係者の休憩所や診療所、食堂、ヘリポートなども設置できるようになる。
農地や生活道路、海水浴場なども海岸管理者(県や市、町)の判断で整備できる。
一方、県は施設設置者に対し、津波に耐えられる設計を取り入れ、具体的な避難対策を講じるよう求める。県は今後、沿岸市町と協議を進め、理解が得られれば、正式決定する。
県は、国の中央防災会議が2011年にまとめた提言をもとに、数十年~百数十年に一回程度起こる津波から全ての人命と財産を守ろうと、防潮堤を水際に整備することを前提としてきた。ただ、防潮堤ができることで、海から工場や倉庫までの距離が遠くなり、物流や水産加工の効率が落ちるとして、沿岸住民が懸念していた。
漁港周辺の整備計画を県と協議してきた気仙沼市は「住民は漁港関連施設を防潮堤より海側に造ることを望んでいる。各浜で計画づくりを進めていく」(水産基盤整備課)としている。
(2013年4月20日 読売新聞)