住民つながり タウン紙から学ぶ 慶大生の木村さん 町民記者と「伴走」
東日本大震災後に、岩手県大槌町で創刊したタウン紙「大槌みらい新聞」の運営を手伝った横浜市青葉区の慶応大学環境情報学部三年生、木村愛さん(21)が八カ月のインターン(就業体験)を終えて今月大学に復帰した。津波で人のつながりが寸断された町で「住民による情報発信」の大切さを学んだ。(新開浩) 木村さんがインターン募集に応じて大槌町に入ったのは昨年七月末。夏休み中の滞在予定だったが、人手が足りず「腰を据えて関わろう」と秋以降も休学して町に残った。 現地で驚いたのは情報量の少なさ。津波で多くの家が流され、残った家は近所付き合いがなくなった。新聞を購読しなければチラシも届かず、高齢者の大半はインターネットが使えない。 「横浜にいると、あふれる情報に疲れる生活。でも、情報がないと、とても不安で寂しいことに気付いた」 大槌みらい新聞は、ボランティアが五千世帯に無料配布し、運営費は企業の支援や個人の募金でまかなう。被災の教訓を踏まえ、町民自身の情報発信力を育てることも新聞の目的の一つだ。 木村さんが主に担当したのは、町民自ら地域の話題を発掘して記事を書く「町民リポーター」の支援。「記事なんて書けない」と渋る人たちを説得し、取材用のデジタルカメラを渡した。 引き受けてくれた七十四歳の女性は、九十歳の男性がウオーキング大会で先頭を切って歩いたニュースを聞き付けて記事にした。 木村さんは「このおばあちゃんが『七十四年生きてきて、今が一番楽しい』と言ってくれたときはうれしかった。人と人がつながり、何かが生まれる面白い経験を将来の仕事にも生かしたい」と抱負を語った。