20130129

高橋亨平先生の思い(1月27日)

 

1月22日、南相馬市の原町中央産婦人科医院院長、高橋亨平先生が亡くなられた。
 震災後にも病院を離れず、産科に限らずあらゆる人々の医療に心を砕いてこられた。ご自身が震災後に発がんされ、厳しい治療を続けながらの必死な診察、医療活動であった。さらには除染研究会を立ち上げ、不安な妊産婦の自宅除染にも率先して関わった。地元の人々にどれほどの安心を与えたことだろう。 

 

高橋亨平先生の思い(1月27日) | 県内ニュース | 福島民報

 私が先生をお訪ねしたのは昨年の5月だった。多くの意義深いお話を伺ったが、基本的な認識として一致したのは、放射線の被曝[ばく]影響について、「累積」する意味はない、ということ(人間のもつ修復力は凄[すご]い)。年間1ミリシーベルトという基準は、間違った計算式から導かれた誤解であること(発がんリスクが0・5%高まるとされる100ミリシーベルトを寿命の100年で割った)。そして、子どもへの被曝影響が大人よりも大きいという推測は、単に受精卵に高線量を照射した結果と受精卵の成熟度からの類推にすぎない、という3点であったと思う。
 先生の気概を端的に伝える文章をブログからご紹介しよう。
「自分でも、何のためにこんな苦しみに耐える必要があるのかと、ふと思う時がある。しかし、この地域に生まれてくる子ども達は、賢く生きるならば絶対に安全であり、危険だと大騒ぎしている馬鹿者どもから守ってやらなければならない」
 また先生は、「意味不明の数値で規制している文部科学省、厚生省(原文ママ)」についても容赦なく発言された。
 折しも昨年12月には、国連の科学委員会(UNSCEAR)から非常に重要な報告書が発表された。
 できれば全文を読んでいただきたいが、何より重要なことは、科学委員会が今回の福島第一原発の事故による放射能汚染で「識別可能な人体への影響はなかった」としていることだろう。過敏な人々は、100ミリシーベルト以上に適用すべきLNT仮説(放射線は少なければ少ないほどいいと考える説)を、それ以下の低線量にも当てはめており、その結果日本では、水はアメリカの120分の1(欧州連合の100分の1)、一般食品でもアメリカの12分の1という異常に厳しい制限を設けているが、いったい何の根拠があるのかと、その報告は日本人に問い詰めている。
 先生が除染すべきと考えていたのは年間換算3・5ミリシーベルト以上の家屋である。自然放射線量が2・5ミリシーベルトから3・5ミリシーベルトに上昇しても発がん率は上昇せず、同じように2・5ミリシーベルトから3ミリシーベルトに低下しても発がん率は低下しないことが分かっているからだ。
 不安や恐怖だけで、ただ3ミリシーベルトを目指す除染はもうやめにしてはどうだろう。正気に返ればお金を使うべき場所はもっと他にあるはずだし、3ミリシーベルト以上の地域は全国各地にある。先生はそう願っておいでのような気がして仕方ない。
 ご冥福をお祈りしたい。
(玄侑 宗久、僧侶・作家、三春町在住)

 

 

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