20120328

社会保障の負のスパイラルを加速する企業収益第一の雇用劣化と消費税増税


 この間、日本科学者会議や全労連が主催する学習会で、元専修大学教授・社会保障問題研究者の唐鎌直義さんの講演を何度か聴いているのですが、その中から「社会保障の負のスパイラル」についての指摘部分を紹介します。(by文責ノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)
http://ameblo.jp/kokkoippan/


 国立社会保障・人口問題研究所の『社会保障統計年報』によると2000年から2007年にかけて、国民所得は371.8兆円から374.8兆円へ3兆円増えています。その国民所得の2000年から2007年への配分変化を見ると、企業所得は83.9兆円から92.5兆円へ8.6兆円も増加しているのに、雇用者報酬(賃金と雇主の社会保険料負担)は271.3兆円から265.7兆円へ5.6兆円も減少しています。(※唐鎌さんの指摘をわかりやすく私が作成したのが上のグラフです。※学習会参加者からもっと直近のデータはないのかとの質問が出ましたが唐鎌さんによると現時点では一番新しいデータだそうです)

 現在の社会保障の基幹には、社会保険制度があります。その社会保険料の基幹には拠出要件を満たす賃金水準が必要となっています。そして、その賃金水準の基幹は安定的な雇用が必要なのです。

 逆に言うと、雇用が不安定で人間らしく暮らせる安定した賃金が満たされる「雇用の質」が確保されなければ社会保険料も掘り崩され、社会保障そのものが危機的な状況に陥るということです。

 そういう意味では、現在の社会保障の財源問題は、国の財政赤字とは相対的に独立した領域で発生している問題だとも言え、野田政権が強行しようとしている「社会保障と税の一体改革」というのは筋違いです。加えて消費税増税を強行することは、低所得者層を疲弊させるものであり、より一層、社会保障制度を不安定にするだけです。

 いま日本で求められているのは「雇用の量」ではなく、先に指摘したように現在の社会保障の基幹となる「雇用の質」の向上です。誰もが普通に働けば普通の幸せを手に入れることができる賃金と社会保障が切実に求められているのです。

 この普通の幸せを阻んでいるのが、「個別企業の収益第一」という新自由主義の経済政策です。そして、上のグラフで見たように、「個別企業の収益第一」がこの間徹底され、手っ取り早く「雇用者報酬」をカットしてきたのです。賃金と雇主の社会保険料からなる「雇用者報酬」を削減するには、労働者のリストラ、長時間過密労働の強制、非正規労働者に正規労働者の穴埋め役を担わせる方向となっていくのです。

 失業圧力の高まりを背景として繰り広げられる非正規労働者の活用は、労働者の賃下げ競争を激しくすると同時に、職域保険から脱落させられる労働者を増大させ、社会保障の基幹となる社会保険制度を掘り崩していくのです。こうして「個別企業の収益第一」によって、「企業収益」だけは好転していきますが、賃下げと社会保障制度の危機で労働者の普通の幸せは遠のいていきます。

 社会保障に対する企業負担を軽減して、企業の収益性を高めれば高めるほど、社会保障財政は逼迫します。日本においては、個別企業の収益向上が社会保障制度の安定に結びつくどころか逆に社会保障制度を破壊しているのです。そして、社会保障財政の逼迫を消費税増税で穴埋めするということは、社会保障に対する企業負担を徹底的に軽減するための方策に過ぎないのです。そういう意味では消費税増税政策を強行しようとする震源地は「個別企業の収益第一」による「雇用の劣化」にあるのです。

 「個別企業の収益第一」→「雇用の劣化」→「貧困化」→「社会保障財政の逼迫」→「個別企業の収益第一」という「社会保障の負のスパイラル」の中にプラスして、貧困層の負担増となる消費税増税の強行を加えると、「社会保障の負のスパイラル」はさらに加速し、個別企業の収益だけが向上し、一層の雇用劣化と社会保障制度の破壊、そして、労働者・国民の貧困化が深刻の度を増して大きく広がることになります。

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