20120227

志木市立市民病院改革委員会報告書

 

 地域の医療の現状が分かるものです。

 

Ⅰ.はじめに

志木市立市民病院(以下「市民病院」という。)は、100 床と病床数は少ないものの、朝霞地区4 市43 万人の小児科救急の3 分の2 にあたる休日夜間24 時間救急を担ってきた。
常勤医師の3 人の退職、年間5 億円を超える税金投入は1 市による財政負担の限度を超え、病院も廃止せざるをえないところまで追い込まれている。

更に日本大学の練馬光が丘病院からの撤退で小児科救急の連鎖的破綻までありうる危機的状況にある。市長の病院存続に賭ける決意に応え、本委員会は平成24 年度から抜本的改革の処方箋を示すものである。

改革は「トップのリーダーシップとスピード、ぶれない姿勢」が重要である。

本報告は現在の危機的状況に鑑み、短期的な課題と長期的な課題に分けて、その解決策を示した。
市長はじめ議会、病院並びに関係部局の職員は存続をかけた最後のチャンスであるとの認識を持って実行に取り組んでいただきたい。

 

Ⅱ.検討の経過と報告を急いだ理由

総務省が平成19 年に定めた自治体病院改革ガイドラインでは、経営効率化、再編ネットワーク化、経営形態の見直しが求められており、今回の改革案に踏み切れない事態になったとしても、平成23 年度で数値目標を達成できなければ平成24 年度には経営形態の変更に踏み切らざるを得ないという切迫した事情があった。

本委員会は平成24 年1 月27 日に施行された「志木市立市民病院改革委員会設置要綱」に基づき、
・市民病院の経営体制のあり方について
・市民病院の経営改善・改革について
・市民病院の役割と他病院・医院との機能分担について
・医療圏における市民病院の位置づけとあり方について
・その他市民病院の経営改革に必要な事項について
の5 点について2 月8 日に第1回委員会を開き協議を開始し、その後関係者が連絡をとりながら検討を重ね、更に2 月21 日、2 回目の委員会を開いて市民病
院の改革について報告案を討議、各委員の意見を集約して取りまとめたものである。

本委員会は、市民病院の置かれた現状に鑑み、2 月22 日から開会される定例会における議論に資する必要から、2 月24 日に最終報告を行うこととした。
限られた時間のため、十分な議論ができなかったのではないかという反省はあるが、委員会の議論経緯及び説明資料等を読んでいただければ、市民病院問題の深

Ⅲ.市民病院の経営組織の構造上の問題

市民病院の経営については、公立病院という制約上、次のような構造上の問題があるので、今後、改革の実行にあたっては留意する必要がある。

(1) 経営の効率が悪い
(2) 経営感覚が欠如している
(3) 病院事業管理者の人事権や予算執行権が適切に行使されておらず、責任の所在が曖昧である
(4) 病院の経営管理を担うべき事務職が短期間に異動を繰り返し、医療制度・病院経営の知識を持った人間が育たない
(5) 病院運営の柱である常勤医師の確保ができず高額なパート医に頼りすぎているため、人件費負担が大きい
(6) 価格交渉力が未熟であり、材料比率が高いなど、高コスト体質がある


Ⅳ.市民病院改革のための意見
100 床のうち45 床が小児科病棟を占めるのが市民病院の特徴であるが、これは経営の面から見ると黒字経営はほとんど不可能に近い。
したがって、現状の歳出と診療科では赤字は必至である。
24 時間365 日の二次救急を行うとすれば、
さらに医師数を大幅に増やさなければいけないなど、現在の市民病院の形態で
は膨大な赤字が継続的に生じるため、市が財政支援を続けたとしても病院経営
は限界にきており、いずれ立ちゆかなくなる。
今後の対応として考えられるのは次の3 つであるが、現状では「1」は必要な医師数を確保しない限り、財政負担が大きく採用するわけにはいかない。
また「3」は現状から考えて、直ちに実施できることではないので、「2」による対応が適当と考えられる。

1 市民の理解を得て財政支援を続け市立病院として継続する。
2 財政支援は繰出基準内を基本に、他の経営主体に病院を運営してもらう。
3 廃院とする。

他の経営主体に運営を委ねる方法としては、一般的には指定管理者制度又は地方独立行政法人制度が考えられる。
なお、市民病院が「2」を選択した場合、老朽化したままの建物では100 床規模の病院を引き受ける民間医療機関はないと思われるので改築を検討する必要がある。
その場合、市の財政状態が厳しいことを考慮すると設計施工一括発注方式を採用して建設コストを大幅削減するとともに、新体制による病院の早期立ち上げに資するため工期の短縮を図るべきである。
また、市の財政負担にあたっては、市の財政運営上の理由から契約条件を変更することがないよう、指定管理者との信頼関係が継続できるよう努める必要がある。
以上、市民病院の置かれた現状等を踏まえ、以下のとおり短期的な課題と長期的な課題に分けて進言するものである。


1 短期的な課題に対する意見

(1) 現状の診療科を維持し地域医療を守るため、医師の確保は最重要課題である。
地域の小児救急を崩壊させないためにも、適切な診療体制(病床数)が必要であり、小児科医師を派遣できる大学病院に対して早急に重点関連病院としての指定や講座派遣を要請すること。

(2) 前段で指摘したとおり小児科医療を柱とする現状では赤字運営が必至で、広域にまたがる医療を1 市の財政負担により担うことに市民の理解が得られるか危惧するものである。
したがって当該病院の運営と費用負担については、今後、県及び近隣5 市1 町と協議すべきである。
財政問題を抱えたままの運営では、院内の管理が厳しくなり早晩、勤務医師が退職、補充すべき医師も確保できなくなるので、診療を中止せざるを得ない状態に追い込まれる。

(3) 現在、朝霞地区医師会の協力により実施している小児救急医療地域連携事業について、さらに継続するためには医療圏を構成する自治体とともに朝霞地区医師会と見直し協議の必要があるのではないか。


2 中・長期的な課題に対する意見

(1) 公立病院改革ガイドラインに基づき、民間的な経営手法の導入が期待できる指定管理者制度(*1)の導入を検討し、経営形態を変更すること。
指定管理者の選定は原則公募によるが、病院運営は医師確保が最大の問題なので、大学医学部の付属病院化あるいは指定管理者による運営が可能ならそれを第一と考え、それが当面困難なら公募による選定を考える。

(2) 大学医学部の附属病院化あるいは指定管理者制度の導入が困難な場合は、地方公共団体の直営事業に比べ、自立的・弾力的な経営が可能となる地方独立行政法人化制度(*2)の導入を検討し、その場合は理事長
など役員の推薦を大学病院又は社会医療法人等に要請すること。

(3) 指定管理者制度や地方独立行政法人化制度の導入を図るため、県の補助などを活用して老朽化した建物の建て替えなどを検討すること。

(4) 指定管理者制度や地方独立行政法人化制度を導入した場合、現在の診療科(訪問看護ステーションなどを含む。)の継続を要請するとともに、地方公営企業の繰出基準で算定した費用と同程度の金額を上限額
(2 億円程度)として繰り出すこと。(新たな特別交付税活用を検討すること。)

(5) 市民病院の性格上、今後急増する高齢者に対応した在宅医療など、地域の医療ニーズを考えた運営を考えること。
*1 指定管理者制度の導入
指定管理者制度は、地方自治法第244 条の2 第3 項の規定により、法人その他の団体に公の施設の管理を行わせる制度であり、民間の医療法人等(日本赤十字社等の公的医療機関、大学病院、社会医療法人等を含む。)を指定管理者として指定することで、民間的な経営手法の導入が期待されるものである。本制度の導入が効果を上げるためには、
①適切な
指定管理者の選定、②提供医療の内容、委託料の水準等、諸条件について事前に十分に協議し相互に確認しておくこと、③病院施設の適正な管理のため事業報告書の徴取、実地調査等を通じて、管理の実態を把握し、必要な指示を行うこと等が求められる。


*2 地方独立行政法人化(非公務員型)
非公務員型の地方独立行政法人化は、地方独立行政法人法の規定に基づき法人を設立し、経営を譲渡するものである。別の法人格を有する経営主体に経営が委ねられることにより、地方公共団体の直営事業に比べ、予算・財務・契約、職員定数・人事などの面でより自立的・弾力的な経営が可能となり、権限と責任の明確化に資することが期待される。
ただし、
法人への移行に際しては債務超過状態の解消その他の課題も多く、特に小規模病院での導入に際しては自立的経営維持の観点から、その後の運営に支障が出ないように検討を重ねるべきである。
                      以上

平成24 年2 月24 日

志木市立市民病院改革委員会
委員長    長 隆
副委員    長林謙治
委員     伊藤雅治
委員     遠藤誠作
委員     関塚永一
委員     武藤正樹

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