20120224

記者の目:「ウソ」で原発交付金=古関俊樹

 ◇「血税」の使途、チェック徹底を
 関西電力・大飯原発のある福井県おおい町が国に虚偽の事業計画を提出し、「原発交付金」25億円を受け取っていたことが毎日新聞の報道で明るみに出た。「国にウソをついた」(町幹部)ことを町議会の議員全員が知りながら、それを黙認していた町も町だが、町の「ウソ」を見抜けなかった国の審査体制にも問題がある。福島第1原発事故を機に、国のエネルギー政策の見直しが検討され、交付金のあり方も問題になっている。交付金の原資は税金だ。実効的なチェック体制がなければ、交付金制度継続への国民の理解は得られない。

 

毎日新聞 2012年2月23日 0時22分
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20120223k0000m070093000c.html

◇原発マネー入り 貧しい町が一変
 人口約8800人のおおい町の経済は原発と切り離せない。1960年代、町は職員給与を支払えないほどの財政難だったが、79年に大飯原発が稼働し始めると、状況が一変。多額の固定資産税や原発交付金が入り、温泉や総合運動公園など豪華施設が次々に整備された。県によると、09年度までに町が受けた交付金は総額約322億円に上る。

 こうした中、町は91年、「原発の町からリゾートの町に」を合言葉に、リゾート施設の整備計画を策定した。マリーナなどが整備されたが、05年にその中核施設であるホテルの事業者を公募した際は、不況で募集が難航。周囲に観光地がないなど立地条件も悪く、結局、応募は1業者だけだった。

 ここで町は、交付金の支給をあてこみ、国への申請で最初の「ウソ」をつく。

 業者は年間来場者を約6万人と予測し事業計画(総額約59億円)=仮にA計画=を立てた。一方、町が事前に作った計画(同約60億円)=仮にB計画=では、年間来場者を10万5000人と予測した。町は実際はA計画を正式採用し準備を進めたが、交付金申請の際は、利用者予測が多かったB計画を国に提出した。当時、交付金で建てた各地の施設の運営が低迷、批判されており、「採算性を低く見積もると交付金が出にくい」との判断が、この虚偽申請の背景にあったと見られる。

 さらに町は2度目の「ウソ」をつく。B計画、すなわち虚偽の計画を基に交付金給付の可否を審査してきた国は、事業費のうち約10億円の削減が可能だと判断。町にこれを求めた。だが、すでにA計画で事業を進めてきた業者が「我々の計画(A計画)では削減は無理だ」と反発。結局、町は国が求めた削減分のうち約7億円をひそかに自ら負担することにし、つじつまを合わせた。無論、国には当時この「秘密工作」を知らせていない。

 これで国の審査は通り、国は交付金25億円を支給。ホテルは09年完成したが、昨年度の稼働率は3割にすぎない。

 ◇透明性を高める外部審査委公開
 問題点は二つある。まず、当然ながら町の対応だ。一連の経緯は07年、町議会の全員協議会に報告され、町幹部が「国にウソをつきました」と告白した。だが問題にならず、2日後の本会議で事業は承認された。当時の町議らは「事業が進展しており、今さら反対できなかった」と弁明するが、それで約7億円もの町税が浪費された。議会のチェック機能が全く働かなかった背景には、交付金に長年依存し、公金感覚がマヒした町の体質があるのは間違いない。

 次に国の対応だ。「行政(町)が行政(国)を欺く」という構図の中、国は一義的には被害者だが、改善の余地はあると思う。例えば、透明性を高めるため、交付金の給付を審査する経済産業省資源エネルギー庁の外部審査委員会を公開してはどうか。同庁は「委員が自由に意見を言えるためにも、公開にはなじまない」と話すが、今回、公開されていれば、町の虚偽申請を見抜く可能性は十分あった。

 交付金支給後の検証体制にも触れたい。同庁は「検証は会計検査院の役目」と話すが、それでは遅きに失する可能性がある。やはり外部審査委員会の審査体制を見直すべきだ。今回、町議会や業者にあたれば簡単に虚偽申請はわかったはずだ。審査体制が強固になれば、虚偽申請の防止にも役立つ。建物の工事終了後に不正が見つかった場合、失われた交付金を回収するのは非常に困難になる。

 国は原発推進で立地自治体に交付金という「アメ」を大量につぎ込んできた。だが交付金の原資は国民の電気料金に上乗せして徴収される税金だ。交付金が「血税」だということを関係者は再認識すべき時にきている。(大阪社会部)

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