2012131

石田衣良 日本人は東京電力と社員を憎むのを止めた方がいい

 

2012年をどう生きるか。常に時代と切り結ぶ小説を世に問うてきた、直木賞作家・石田衣良さんに聞く。2回目のテーマは「震災と小説家」。(聞き手=ノンフィクションライター・神田憲行)

――3.11以降、震災をテーマにした小説がいくつか出ています。石田さん自身はどのようにお考えですか。
石田:今出ている震災をテーマにした小説はシリアスな純文学ですね。エンターテイメント小説にするには、まだしばらく時間がかかると思います。もし井上ひさしさんがご存命だったら、あの人東北出身だから、たぶん震災でコメディを書いたんじゃないかな。
僕は震災をテーマにしたアイデアは、SF、ラブストーリー、コメディの3本持っています。コメディは実際にある話を素材にするつもりなんです。
いまある地域でがれき処理で重機を運転する人たちがひとつの旅館を借り切って作業しているんですが、その旅館の一間にスロットル、もう一間にキャバクラが出来たんだそうです(笑)。
――旅館でキャバクラですか(笑)。
石田:しかもそのキャバクラの名前が「復興キャバクラ 夕顔」とかいうらしいんです(笑)。日本中から集められたガタイのいい兄ちゃんたちが昼間はガンガン重機を運転して復興させて、仕事が終わったらちょっとスロットル弾いたあとキャバクラで女の子とお酒を飲んで昼間の疲れを癒す。いい話じゃないですか(笑)。報道は「命が大事」とか絆とかばかりやってますから、小説はそこを書かないとつまんないなあと思っています。
――「そこ」とは、つまりなんでしょうか。
石田:何があっても生きている人。その中で悲しいこともおかしいことも全部あって、それがちゃんと回っていく。今は光の当て方が一方向だけで、フラットになっていますよね。絆だったり、立ち上がる人だったり。悲しみにくれる人ばかりだけではないと思うんです。
――たしかにとくに原発問題では、文化人だけでなく財界人や芸能人まで口を揃えて反原発の大合唱ですね。
石田:いま日本のインテリが立ついちばん安全で正しい場所は「反原発」と「エコ」ですから。僕自身は反対でも賛成でもないけれど、客観的に電力事情をみれば原発を残さざるを得ないだろうなあと思っています。全ての悪も危険も排除して生きていくことは不可能なのだから。
現代人は常に不安やストレスにさらされていて、そのはけ口として外部に単純な悪を設定したがる。外国ならそれが移民排斥などの民族問題になるんでしょうが、日本の場合は一部韓国や中国に向かっている以外は、今は東京電力や政府に向かっているんじゃないでしょうか。でも地震が起きる前はみんな、普通にテレビをみたりゲームをしたりして原発の恩恵にあずかっていたわけですから。
正当な批判はすべきなんですが、「会社を潰してしまえ」とか「社員の給料をゼロにしろ」とか、無茶苦茶なことをいう人もいる。
でも簡単に人を憎むのは止めた方がいいですよ。心の機構がそうなってしまうと、次からは人を憎むことでしか自分の確認出来なくなってしまうから。

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