20111208

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 スローレポート 『S−Report』 (12/8号)

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◆◆◆   福島で生きる。世界と生きる。    ◆◆◆

      ふくしま会議2011

 

 11月11日から13日まで「ふくしま会議2011」(主催 ふくしま会議運営委員会)が福島市の福島大学などで開催された。


 

「3.11以降、未曾有の原発事故により福島の人々は放射能汚染と向き合わざるをえない状況に追い込まれました。暮らしが根底から一変しました。
 6ヶ月たった今、前向きに生きようとする多くの福島の声が生まれています。しかし、それらの声はときに小さく、人々のいのちと暮らしを守るまでには至っていません。一つひとつの声を集めて、県内県外、そして世界のより多くの人々に届ける場が求められています。
 声を行動に。ふくしま会議を開催します。
 福島の声は、届けることも聴くことも、日本にとって、世界にとって、すべての人々にとって、未知の課題と向き合う力になります。様々な意見を集約し、それぞれの人がそれぞれの答えを持ち帰る。
「ふくしま会議2011」は、福島の人々を中心に、いま聞きたい話を聞き、いま語りたいことを語る場所です。日本や世界から有識者たちを招き、福島のこれまでとこれからを語る場所です。内外の英知を福島に結集することで、放射能の不安や、故郷の再生に立ち向かう市民の疑問に応え、ときには車座になって直接語り合う。明日への希望を見い出し、一つひとつのアイディアを実行に移していくこと、そして、福島の声を世界に届けていくことを目的として、福島の地で開催します。
 多様な出会いが声を生み、声が広がり、行動が生まれる。私たちはそう信じています。」(同趣旨)

 11日の開会挨拶では共同代表の清水修二福島大副学長が「原発事故で県民は全て被害者のはずだが、放射能から避難した人としない人が反目するなど分断が生まれている。分断を乗り越えるスタートにしたい」と述べた。

 全体会の第一部では、まず、講話として共同代表の芥川賞作家で三春町の福聚寺住職の玄侑宗久氏が、福島の声を世界に届けたいという「ふくしま会議」の想いを述べ、原発事故で避難せざるを得ない地域の人々の苦しみや賠償されても救われない人がいることを語り、この会議を大きな社会の流れになるきっかけにしたいとまとめた。

 次に、福島県立博物館館長の赤坂憲雄氏、奥会津書房の遠藤由美子氏の進行で会場全体で、福島県内各地の人々の声を聞くセッションが行われた。  地元の人の避難の様子、仮設での暮らし、農家の想い、スーパーの店主の困惑、高校生の悩み、大学生の主張が次々と語られた。
 放射能で未来のみえない若者、安全な食べ物を巡って争うことになる農家とこどもの親、こどものことを考える母親の想い・・
 立ち入り禁止の我が家に飼育する牛の世話をしに通う吉沢正己氏は「事故を忘れないためにも生きた証しとして飼育し続けたい」と。

 進行の赤坂氏が、「ここに来ている人は、みんな手弁当。政治家も。環境省の責任者に話を聞きたい」と発言を促されたのは環境省の政務官である高山智司議員である。
 高山環境政務官は「除染担当の責任者とご紹介頂きましたが、除染は国の責任で行います。除染、放射性廃棄物どのように扱うか8月まで法律がなかったが、公害であるという捉え方で環境省で除染を行います。ただ、こうすればいいという決定版がなく、試行錯誤しているのが現状で、除染はやれば線量がさがるし、ここ1,2年の予算は確保できていると思うが、人手が足りていない。」と述べた。
 飯舘村の菅野典雄村長は「巨額の公金を投入してもらってでも、除染をやってもらうしかない。(除染は)1、2年が勝負で、それ以上たてば(放射能汚染だけでなく)住民の心が荒れてしまう。だが、国の対応は遅く、村でやることにした。」と語った。
 南相馬市長のメッセージが代読された。「国と一緒に解決したいが、待っていられない。南相馬は独自でふるさとの環境を取り戻していく。新しい命を育むために南相馬市は自ら動いていく覚悟だ。」
 また、原発から1kmに住んでいて避難している若い父親から「避難も留まる事でも選択権がほしい。飯館村の例のように除染に莫大な費用がかかるなら、そのお金で移住する事も」との発言もあった。

 首相からのメッセージの代読もあった。
「福島の再生なくして、日本の信頼回復はありません。福島の多くの声を集め、皆で福島の現状を分かち合い、福島の未来を話し合う、そしてその福島の声を県内外、世界に届けることは福島の復興にとって 大切な事です。その場としての「ふくしま会議2011」の開催を心から応援します。(以下略)」
 
 「つながろう南相馬!」代表の高橋美加子氏が、浪江町から避難している詩人みうらひろこ氏の「我ら原発難民」という詩を朗読した。
 
「我ら原発難民」
 
 原発難民と呼ばれて八ヶ月

 山と川と海の美しい町から
 穏やかな日常があった住み家から
 ある日突然放逐されてしまった
 福島県相双地方の人達よ
 
 故郷は今も降り注いでいる
 放射性セシウムの雨、雨
 色も臭いもなく見えない恐怖の雨(以下略)
 
 
 みうらひろこ
 
 
 休憩時には、南相馬市原町地区在住の若松丈太郎氏がチェルノブイリ事故発生時に書いた詩「神隠しされた街」が映し出された。
 
「神隠しされた街」
   
四万五千の人びとが二時間のあいだに消えた
 
サッカーゲームが終わって競技場から立ち去ったのではない
人びとの暮らしがひとつの都市からそっくり消えたのだ
ラジオで避難警報があって
「三日分の食料を準備してください」
多くの人は三日たてば帰れると思って
ちいさな手提げ袋をもって(中略)
 
地図のうえからプリピャチ市が消えた
チェルノブイリ事故発生四十時間後のことである
千百台のバスに乗って
プリピャチ市民が二時間のあいだにちりぢりに
近隣三村あわせて四万九千人が消えた
四万九千人といえば
私の住む原町市の人口にひとしい
さらに
原子力発電所中心半径30㎞ゾーンは危険地帯とされ
十一日目の五月六日から三日のあいだに九万二千人が
あわせて約十五万人人びとは
100㎞や一50㎞先の農村にちりぢりに消えた
半径30㎞ゾーンといえば東京電力福島原子力発電所を中心に据えると
双葉町 大熊町
富岡町 楢葉町
浪江町 広野町
川内村 都路村 葛尾村
小高町 いわき市北部
そして私の住む原町市がふくまれる
こちらもあわせて約十五万人
私たちが消えるべき先はどこか
私たちはどこに姿を消せばいいのか
(以下略)
 
     全文
 
 若松丈太郎   連詩「かなしみの土地」より


 全体会の第二部では、県外から来た人も発言して車座形式で議論が続けられた。

 多様な意見が寄せられ、全体会の様子はユーストリームで生中継され、全国から寄せられたたツィッターの意見も紹介され、論議された。

 避難か、住み続けるか。
 マスコミが伝えない福島。
 忘れられてる福島をどうするか。
 国や東電の姿の見えない福島の現状。

 福島県の佐藤栄佐久前知事が、自らの県政での実績と最近、海外メディアから取材を受けた事などを話続けた。

 その演説を遮る陽に焼けた男の声がきこえた。

「私は政治家の話をここに聞きに来たのではない。

 私は神奈川の藤野町(相模原市)に住む者で震災から宮城、岩手、そして福島などで出来る限りお手伝いをしてきました。

 私はお茶をつくっているのですが、今年は私たちの足柄茶は放射能で全滅です。

 ここにきて、福島の人の話を聞いて未来を考えるために来た。
 
 だから、あなたは黙ってください。」

 ここは直接話を聞いて、対話の力で未来を考えて行く場所だ。
 

 最後に、赤坂氏はこう述べた。

「締めの言葉を探していました。
 
 でも、ありません。

 ただ、一人の女性の話をします。飯館村出身で遠くにこどもを預けでいるその人は自分のこどもの戸籍を変えなければと考えていますと私に言いました。

 こういう状況を変えるために闘うことがあります。
 
 それは「誰と闘う」ではなく、「こどものために闘う」ことだと。

 結論なんてありません。

 今日語られた福島の想いは全国、全世界に伝わっています。また、それぞれの現場で闘っている姿も伝わっています。

 この会議がつながっていく場になればいいと思っています。」


 福島は原発事故でヒロシマ、ナガサキとならんで「フクシマ」と呼ばれる様になった。

 悲しい事だが、元のような福島には戻れないかもしれない。

 だから、フクシマから福島に戻るのではなく、「ふくしま」をみんなでつくる。
 
 そのひとつが「ふくしま会議2011」だと思う。
 
  「だと思う」と書いたが、これを安易には言えない。

 その道は果てしない。
 
 でも、今日ここで、確かに「今世界にひとつだけの強い力をみたよ」

   (「できっこないを やらなくちゃ 」 サンボマスター)     


◆◆◆             ご案内              ◆◆◆


 ESDカフェatソノツギ

  持続可能な社会づくりのための学び合いのためにESD

 今回は、持続可能な社会をつくるために学生の参画を取り上げ、コミュニケーションカフェ「ソノツギ」で気軽なトークセッションを行います。

 内容は、学生の地域との関係を調査・研究している大学院生が学生の地域参画についてデータと調査にもとづいて話すものです。

 場所は、『地域の縁側』と『LOHAS』(Lifestyles of Health and Sustainability)、つまり環境と健康に配慮した持続可能なライフスタイルの提案と実践の場として市民と学生によって作られたソノツギです。

 宇都宮大学院生の渡邊真弓さんには山形大のもがみエリアキャンパスに関わる学生の意識や行動の調査をお話頂き

 千葉大学院生の高瀬唯さんには、学生の自然保全活動の参画にかかわる活動の調査をお話頂きたいと思います。



日時 12月6日(火) 午後1時から3時半

場所 コミュニケーションカフェ「ソノツギ」宇都宮市

  http://www12.plala.or.jp/keith7/sonotugi/sub7.html  
駐車場がありませんので、公共交通機関・自転車・徒歩でお越し下さい。
バスでは東野バス・JRバスでは平松または宇大前、関東バスでは宇都宮大学前で下車。


ソノツギとは
http://www12.plala.or.jp/keith7/sonotugi/index.html


「コミュニティ・カフェと市民育ち : あなたにもできる地域の縁側づくり」
陣内雄次, 荻野夏子, 田村大作著 萌文社

共催 ESD学校教育研究会 宇都宮大学 陣内研究室


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