20111014

出所者の受け皿「自立準備ホーム」=社会部・牧野宏美

 

 

◇「隙間」埋め復帰後押し

 

 法務省は帰る先のない刑務所の出所者らのため、民間団体が管理する施設などを活用する「自立準備ホーム」の事業を進めている。帰る先がないと短期間で再犯に至る傾向が強く、社会復帰の受け皿不足が課題だからだ。ホームを運営するNPO法人の活動に同行し、「隙間(すきま)」を作らない支援の重要性を実感した。

(毎日新聞)

 

以下、続く


 ■「食べ物求めて」
 「結構広くていい部屋ですね」。8月、さいたま市内の住宅街にあるアパートの一室で、埼玉県のNPO「ほっとポット」の代表、宮沢進さん(28)が約10日前にシェルターから転居したばかりの男性(37)に明るく声をかけた。
 男性は携帯電話ショップから携帯電話2台(約9万円相当)をだまし取ったとして起訴され、7月に執行猶予判決を受けた。20歳ごろ家を出て以来、家族とはほとんど連絡を取っていない。職を転々とし、事件直前は石川県の半導体工場で派遣社員として働いていたが、昨年暮れに突然解雇された。生活費に困り、ネットを通じて知り合った手配師の男から、携帯電話を契約だけして渡す「仕事」を受けた。しかしもうけは少なく、食べ物を求めて建物に侵入したところを現行犯逮捕され、詐欺も自首した。所持金はわずか13円だった。
 弁護人が逮捕直後にほっとポットに連絡し、判決後すぐにシェルターに入ることができた。現在は生活保護を受けながらハローワークに通う。男性は「製造業の仕事を探しているが、なかなか見つからない。支援のおかげで生活はできているので、あせらずに長く続けられる仕事を見つけたい」とうつむきがちにぽつりぽつりと話した。


 ■まず住むところ
 宮沢さんは大学卒業後、さいたま市の非常勤職員としてホームレス相談員になった。認知症の疑いのある高齢男性に出会ったが、福祉事務所に連絡しても「施設に空きがない」などと断られ、結局男性は衰弱し路上で亡くなったという。その時の悔しさから「素早く動ける民間の立場で活動したい」とほっとポットに入った。
 「ほっとポット」は社会福祉士4人で構成し、主にホームレスなど生活困窮者の支援を行っている。活動する中で宮沢さんは、罪を犯した後の路上生活者に行き場がなく、犯罪を繰り返す人が多いと気付いた。約2年前から弁護士会などと連携して空き家などを借り、行き場のない出所者らを緊急保護するシェルターを運営する。滞在期間は原則1カ月で、新しい居住先を見つけたり、生活保護の申請手続きなども手伝う。
 今年9月末までの申し込み者数は約170人で、大半が貧困を原因とした窃盗罪だった。保護されて初めて、知的障害などが見つかることもある。「住居を確保し、適切な支援を行うことで再犯は確実に減らせる」。取材の途中にも釈放者の緊急保護を求める連絡が入り、宮沢さんは慌ただしく警察署に向かった。

 

 ■民間施設など活用
 法務省が始めた「自立準備ホーム」事業も同じ発想だ。09年の満期釈放者1万5324人のうち、帰る先のない者は6715人に上り、約44%を占める。04~08年に刑務所に再入所した者で前回出所時に適当な帰る先がなかった者のうち、56・6%が1年未満で再犯している。最近は長引く不況で貧困化が進み、犯罪傾向のない「ごく普通の人」が道を踏み外してしまうケースが多いという。受け皿として法務省の認可を受けた更生保護施設などがあるが、定員が足りず、対応できていないのが現状だ。
 ホームは保護観察所に登録したNPO法人や社会福祉法人の施設の空き部屋などで、出所者や容疑者・被告段階で釈放された人を一時保護し、職員らが毎日面談をして生活指導を行う。団体には1人1日あたり約5000円(食費込み)を支払う仕組みだ。法務省社会復帰支援室は「新たに施設を作るのは金も時間もかかる。民間団体を活用すれば費用も抑えられ、団体の特色やノウハウを生かした支援ができる」と説明する。


 ■悪用の恐れも
 里親として子ども6人を養育している大阪市旭区の宗教施設では、5月から保護観察中の少年2人を受け入れた。家庭的な雰囲気で、食事やだんらんには全員がそろう。少年は子どもたちに慕われ、積極的に家事を手伝うようになった。1人は「職業選択の幅を広げたい」と働きながら定時制高校を受験したという。施設の代表の男性(59)は「複雑な家庭環境の子どもを預かる点では里親の役割と同じ。今後は職業体験などもさせて自立のきっかけになるようにしたい」と意気込む。
 一方で、課題もある。宮沢さんは「適切な支援をするため入居予定者と事前に面会する必要がある。遠隔地の刑務所への旅費なども負担すべきだ」と注文する。また、保護観察所への登録には厳格な審査や違反の際の罰則もないため、「貧困ビジネス」に悪用される危険性を指摘する声もある。ある保護観察所には「いくらもらえるのか」と金の話ばかりする不動産業者からの問い合わせがあった。結局登録しなかったが、対応した職員は「今のところ面接などで見極めるしかない」と明かす。
 私が取材した男性は不器用だが真面目で、「犯罪者」のイメージとはかけ離れていた。国がこうした人たちの受け皿作りに乗り出した意義は大きい。成功には地域社会の理解が必要不可欠で、立ち直りを温かく見守るホームが増えるよう期待したい。

 

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