(岩手)県は23日、市町村と連携し、被災者の被災状況や義援金支給状況などを総合的に管理する「被災者台帳システム」を導入する方針を明らかにした。被災者の情報を包括的に管理することで生活再建に向けた支援の取り残しを防ぐことが目的。被害が大きかった東北3県で県と市町村が連携したシステム導入は初めて。
同日開かれた県個人情報保護審議会(会長・石川哲弁護士)で県が明らかにし、県個人情報保護条例の「個人情報の取り扱いに関する制限」の適用外とするよう諮問、了承された。
同システムは本来、市町村が独自に導入するが、特に沿岸部は被災により行政機能が低下しているところが多く、県が市町村から情報提供してもらい、システムを構築。希望する市町村に提供する。
住民基本台帳や住家などの課税台帳、罹災(りさい)証明の発行状況など基礎的データに加え▽仮設住宅への入居状況▽義援金の申請・支給の結果▽医療や福祉分野などの相談対応―などとも連結させて一つの台帳に統合する。これにより1世帯ごとに被災から現在までの状況を把握できるようになる。
市町村が被災者情報を総合的に把握することで、被災者の各種申請時の確認作業が軽減されるほか、義援金の未申請など支援が受けられるのに手続きを行っていない人を掘り起こし、支援の漏れを防ぐことができる。
県は現在、沿岸12市町村と4月7日の余震による被害があった内陸部の自治体に説明を行っている。早ければ来月中の運用開始を見込む。
一方、個人情報が含まれるため、厳重な管理体制が求められる。23日の審議会では委員から「セキュリティーを徹底してほしい」という指摘があった。県は▽パスワードの細分化▽閲覧できる情報の制限―などでセキュリティーには万全を期す方針。
県総合防災室の越野修三特命参事は「市町村の業務の効率化につながるシステム。セキュリティーをしっかりとして、進めていく」としている。