ESDの10年・地球市民会議2010
9月10日、東京の立教大学で「ESDの10年・地球市民会議2010」(「ESDの10年・世界の祭典推進」フォーラム主催)が開催された。
ESDとはヨハネスブルグサミットにおいて日本が提唱し実現した「国連持続可能な開発のための教育の10年」で行われる「持続可能な開発のための教育=Education for Sustaina
ble Development」のこと。
このイベントはESDの総括フォーラムを日本で開催するために企画され、今回のテーマは「アジアへ!! ひろがる・つながる・みえる」で下記の趣旨で開催された。
「ESD地球市民会議2009の大会宣言に基づき、日本のESD活動を「ひろがる」「つながる」「みえる」プロジェクトに進化させると同時に、この潮流をアジアへのネットワーク拡大につながる「対話」と「交流」の場とします。教育界・地域社会・企業・NPOの活動の中に広がるESDの優れた実践にフォーカスをあて、モデルとなる事業やプログラムの戦略や組織、推進力を学びます。」
まず、「ESDの10年・世界の祭典」推進フォーラム代表理事阿部治氏(立教大学ESD研究センター長)の挨拶、関係省庁、ユネスコ国内委員会会長、ユネスコ大使の来賓挨拶が行われた。
第1部、記念講演「日本のESDとアジアの連携の今」金沢大学環境保全センター教授の鈴木克徳氏(ESD-J理事)がESDの経緯や現状やESDJについて述べ、推進の仕組みづくりが必要と述べた。
日本でもいろいろな教育を推進しているが、ESDそれらをつないで持続可能な社会づくりを行うものだと述べた。
基調講演をインド・環境教育センター所長のカルティケーヤ・サラバイ氏が行った。サラバイ氏はESDは教育の新しいパラダイムであり、教育とコミュニュケーションを重要だと述べた。また、ESDは個々の教育の関係づけではなく、人々のライフスタイルに関わるものでエンパワーメントであると語った。
その後、阿部氏のコーディネートでサラバイ氏とユネスコ国内委員会会長田村哲夫氏、ユネスコ大使の木曽功氏で対話が行われた。
木曽氏はESDはいろいろな活動や教育とつながっていくいくこともできると述べた。(木曽氏は途中退場)
田村氏はユネスコ国内委員会の活動やユネスコスクールの活動について述べた。
阿部氏は、世界には、日本のESDJの様な環境教育だけはない様々なテーマ、教育が集まったものやスリランカのA.T.アリヤラトネ氏のサルボダヤ運動などはなく、アジアのESDが果たす役割があるのではないのか、と述べた。
ESDと農村開発というテーマもサラバイ氏のインドやアリヤラトネ氏のスリランカと日本と共通の課題であり、アジアの連携について論議した。
サラバイ氏は、ESDでサステナブルサイエンス(持続可能な科学)が必要であり、また、資金提供だけでなく、現場に参加し、協働するCSR(企業の社会的責任)の役割も重要であると述べた。
田村氏は、ESDに関連して日本企業の資金提供のCSRの実例やキャリア教育の価値など述べた。
阿部氏は、ESDがCSR国際規格ISO26000に盛り込まれたことなどを述べ、今後、キャリア期教育も含めてESDの新たな展開が必要だと述べた。
第2部では分科会として農村開発、気候変動、都市の持続可能性などのテーマ別にケース発表と討議が行われた。
分科会「都市の持続可能性」では、東京大学大学院准教授の鎗目雅氏のコーディネートで、UNEP-同済大学環境研究所教授蒋大和氏、天津の南開大学教授の唐景春氏、タイのチュラロンコン大学ダナイ・タイタクー氏が発表した。
鎗目氏は、ESDには、ESDとは何か、ESDの制度化の問題、ネットワーク・協働の3つの問題があると述べ、「都市の持続可能性」についてESDではどのようなことができるかを考えたいとの問題提起を行った。
また、東京大学が柏市でおこなっている「都市の持続可能性」に関わる社会実験について述べた。
蒋氏は、中国のエコシティ・エコ開発について経済的に成り立つ政府主導のエコ開発について述べた。エコシティは技術的にも可能であるが、実現には困難を抱えている。中国ではエコガーデンシティ、エコデモンステーレーションシティ、エコシビライゼーションシティなど多様な取組みがあり、すでに1990年代にエコシティ実証プログラムを始め、モデル地区が認証された。
その後、このエコシティプログラムは経済だけでなく、農村開発などの方向も加えて、国全体の計画が立案されているが、まだ、そのマネジメントの部分が弱いという、そして、各地で着実にエコシティ・エコ開発の実例を紹介した。
中国のエコシティ・エコ開発について特徴としては、経済発展と同時に行うと同時に環境汚染や農村と都市の格差などの問題を解決するものであると述べた。
唐氏はシンガポール、天津のエコシティについて述べた。天津では、エコシティ開発計画を政府から承認され、2015までにエコ産業システム・経済、資源の安全・分配、生態環境、エコ文化の確立を目標に進められているという。
中国とシンガポールの政府で、人と人、人と経済、人と環境の調和を目的としたエコシティの政策協定が結ばれ、シンガポールと天津のエコシティのプロジェクトが始まった。
このプロジェクトは、政府・地域政府、企業、市民が協力して行われており、指標をつくり、他の地域のモデルになるものとして実行されている。
タイタクー氏は、都市の持続可能性について具体的にバンコク周辺の農業地帯の生態学的変化の例を述べた。
バンコクでは、過去、生態系を無視した都市の拡張が行われ、川、水と人、生活の関係が変化を強いられたという。
同氏は、このような状況で、このような都市の拡張に対して、伝統的な住居や生活環境を持続可能な形に変えていくために、その地域固有の知識や学びによって、多様なセクターと多世代の包括的なパートナーシップで行う新しい持続可能な地域開発が必要とされていると述べた。
国際連合大学高等研究所ESDスペシャリストの望月要子氏が、トランスバウンダリーラーニングとしてのESDについて述べ、普通の人にわかるESDも重要だと語った。
その後、国の状況の違いや指標、また、つながりについて、会場からの質疑も含めて討議が行われた。
そして、第2部の分科会のコーディネーターから報告があった。
分科会「農村開発」のコーディネーターから分科会の各氏の報告内容について述られた。
スリランカのサルボダヤ運動についてA.T.アリヤラトネ氏の人が強欲さを自制して、すべてのひと、自然とのつながりによる開発と学びについて語られたと報告した。
カンボジアのRCEプノンペン・国立農業大学のティム.ソフィア氏、東京農業大学の三原真智人氏がこども教育と化学的農業に対して食農教育による農村開発の事例について語られたと報告した。
RCE仙台広域圏・宮城教育大学の小金澤孝昭氏が環境保全型農業とESDの取組みについて語られたと報告した。
討論では、各国の共通点・相違点、消費者の生産者支援、アジアで一緒にできることとして人々が地域で共有し、自己決定できるような教育・活動が必要とのこと。
分科会「気候変動」のコーディネーターから分科会の各氏の報告内容について述られた。
インドのRCEデリーのランジャナ・サイキア氏のESDは考え方の変化や倫理的視点が重要であることなどが語られたと報告した。
中部大学学生カマタ氏よりインドで行われた「気候変動」の国際ユースセッションの体験と地産地消について語られたと報告した。
中部大学国際ESDセンターの研究員古澤礼太氏の地域との協働と森の健康や都市農業について語られたと報告した。
RCE中部運営委員会委員長・名古屋大学大学院教授竹内恒夫氏の中部・名古屋の「気候変動」の状況と取組みと生活圏の再編による地域経済の再生・雇用の創出について語られたと報告した。
財団法人オイスカの後藤氏によるキャパシティビルディング、スピリュアリティの重要性とオイスカ野活動について語られたと報告した。
分科会「農村開発」のコーディネーターからUNEP-同済大学環境研究所教授蒋大和氏、天津の南開大学教授の唐景春氏、タイのチュラロンコン大学ダナイ・タイタクー氏が発表について語られたと報告した。(上記)
都市の成り立ちによって社会的学習やトランスバウンダリーラーニングの違いがあり、多様性のあるアジアでは、同じ指標でいいのかも検討することが必要だとのこと。
第3部「企業ESD事例紹介」では、公益社団法人日本環境教育フォーラム理事川嶋直氏のコーディネーションにより企業の事例紹介が行われた。
株式会社損保ジャパンの福井氏から気候変動の異常気象による保険損出と同社の全員参加の環境活動とタイの異常気象対応の干ばつ損害保険についての報告があった。
電源開発株式会社の藤木氏からキープ協会と協働の森と発電所の体験ツァーとカフェを行う「エコ×エネ体験プロジェクト」についての報告があった。
東京電力株式会社の浅井氏から持続可能な社会の担い手づくりのためのエネルギー教育を中心にしたESDの取組み、同社45支社でのESD教職員研修と次世代教育についての報告があった。
株式会社日能研の高木氏から子どものためのESDの取組み、環境プックなどについての報告があった。
バードハウス・プロジェクトの吉野氏から巣箱づくりを通して地球環境の未来を考えるプロジェクトについての報告があった。
川嶋氏は第2部のまとめとして協働、社員参加、つながり・関係などのキーワードを述べた。
最後に「ESDの10年・世界の祭典」推進フォーラム代表理事阿部氏は昨年の「ESDの10年・地球市民会議2009」を受けて、今年はアジアに広げて、農村、都市、気候変動などの共通のテーマで行ってきたと述べ、これを2014年の終わりのはじまりのテーマとしたいと述べた。そして、そのテーマを欧米型社会ががたどってきた開発ではない、持続可能な開発のビジョンを各人か持ち寄って構想したいと語った。
また、同推進フォーラム事務局長福井昌平氏から今後の展開についての話があった。
このイベントはUstreamで中継され、後日、日英語版がデジタルアーカイブとして公開されるとのこと。