はたらくこと・いきること・くらすこと・いかること
映画『Weabak:外泊』上映会+トーク@川口
レジと台所の前からたちあがる
5月29日、川口市メディアセブンで「はたらくこと・いきること・くらすこと・いかること 映画『Weabak:外泊』上映会」(主催:『外泊』を観る会@埼玉(ゆるわ~くす)共催:特定非営利活動法人ハンズオン埼玉)が行われた。
これは、映画『Weabak:外泊』をいっしょに・みて・はなして・かんがえたいというイベントである。
映画『Weabak:外泊』は2007年に韓国でハイパーマーケット「ホームエバー」で非正規従業員の一斉大量解雇に反対したレジ担当などの女性たちが占拠・抗議行動を行った様子を描いたものである。
映画は、レジの前に毛布を敷き、寝ているシーンから始まる。女性たちは、一斉大量解雇をすすめる会社に対して「外泊:Weabak」、つまり、泊まり込みでの交渉と解雇撤回をもとめた。
韓国でも非正規雇用が問題となっており、同年7月1日には「非正規職保護法」が施行され、非正規雇用の待遇を変えなくてはならなくなった。その前にホームエバーを経営するイーランドグループは新法から逃れるためにレジの外注化をはかり、非正規従業員の一斉大量解雇を行った。
女性たちはスーパーの中で不当性を訴える抗議活動とともに、会社が非正従業員への待遇や訓練をしたかを寸劇で再現する。彼女たちを「オバサン」と呼び、レジを打つ仕事だけでなく、接客のための異常なまでの教育や指導が行われたことなどが明らかになる。
上映後、女性と貧困ネットワーク運営委員の栗田隆子氏(有限責任事業組合フリーターズフリー組合員)のトークと意見交換が行われた。
栗田氏は自らの派遣体験から日本の非正規雇用の実態を語るとともに、同じ非正規でも女性がさらに苦しい立場にあることを述べた。
日本の企業には正規従業員の夫の収入を前提とした女性への「パート的扱い」があり、収入の統計は世帯単位で行われ、女性の労働や収入の実態は見えにくい、と栗田氏は言う。さらに、企業の女性や非正規への対応に声をあげなかったことも問題だと述べた。
女性と貧困ネットワークはこの問題を取り上げており、女性の貧困の問題について声をあげるだけでなく、実際に集まって励ましあったりすることで女性が元気になるという。
参加者からは韓国の実情や日本の問題点などが語られた。
レジの前ではたらく「オバサン」は家に帰ると台所にたつ「主婦・母親」でもある。企業ではパートの「オバサン」であり、家庭では「主婦・母親」もこなさなくてはならない女性が、この映画でも会社に私はパートの「オバサン」じゃないと叫び、スト中に夫から家事をしないことを責められることを嘆くシーンがある。これが働く女性のおかれた現状ではないか。
この映画では外泊(泊まり込み)して、みんなで料理して、歌い、踊り、泣き、笑い、語り合うことで、パートの「オバサン」や「主婦・母親」ではなく、働くおんなとして変化していく姿が描かれている。
非正規労働者で主婦で母親という役割だけではなく、働くおんなとして「はたらくこと・いきること・くらすこと・いかること」を考えることは大切なことではないか。
◆『Weabak:外泊』
この映画を各地で上映して頂きたいと思います。
この映画を上映されたい方は下記まで。
■栗田隆子氏
有限責任事業組合フリーターズフリー組合員
女性と貧困ネットワーク運営委員
著書に「フェミニズムはだれのもの?フリーターズフリー対談集」(人文書院)。
働けといわないワーキングマガジン『フリーターズフリー』で「“ないものとされたもの”これくしょん」掲載。
連載「フェミニズムの瞬く場所」(『ふぇみん』月1回)、不思議の国のフェミニズム(『オルタ』)など。